「高等学校国語・新学習指導要領」に関する見解

平成30年に告示された新学習指導要領において、国語科必履修科目は「現代の国語」と「言語文化」に、選択科目は「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」の4科目に分かれているが、これらの科目を「論理的な文章」「実用的な文章」を扱うか、「文学的な文章」を扱うかによって区分する基準に対し、われわれは深い憂慮を覚えるものである。「論理」「実用」と「文学」とを対立概念として捉えることは元来不可能である。また、個々の教材を「文学的」であるか否かによって区分することもまた不可能である。

日本語の歴史とともに歩んできた「文学」は、人間の存在意義や尊厳と関わる人文科学、社会科学全般と密接に関わっている。「文学」を狭義の言語芸術に限定し、囲い込んでしまうことによって、言葉によって新たな世界観を切り開いていく「人文知」が、今後の中・高等教育において軽視され、衰退しかねない危惧がある。

上記の観点から、新学習指導要領の実施にあたっては、単位の認定、教科書検定等に際し、「人文知」の軽視されることのない、柔軟な運用を行うことを強く求めるものである。

2019年(令和元年)8月10日
古代文学会/西行学会/上代文学会/昭和文学会
全国大学国語国文学会/中古文学会/中世文学会
日本歌謡学会/日本近世文学会/日本近代文学会
日本社会文学会/日本文学協会/万葉学会
美夫君志会/和歌文学会/和漢比較文学会
(五十音順)

当学会として上記の「見解」に連名で賛同する。

2019年9月14日
仏教文学会

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